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佐野陽子ゼミナール同窓会は、慶応義塾大学商学部「佐野陽子研究会」所属の卒業生の交流の場として発足しました。

佐野先生からのメッセージ

2012年1月 
3.11震災を考える
 日本大震災について、人それぞれに衝撃を受け、聞き、読み、語り、さまざまな行動を起こしていることでしょう。私だけここで述べるというのは本意ではありません。皆さんの考えを訊きたいのです。
私が一番驚愕し、もっとも口惜しく思ったのは、この震災で失われた人命の多さです。1000年に一度の地震とか、未曾有の津波とかは驚きますがああそうか、と受け止めざるを得ないでしょう。でも、この21世紀の平時の日本で、19,334 の死者・行方不明者を出すというのは考えられないことです。(1896年の三陸大津波では死者数が26,360と記録されています。)建物や設備の崩壊はいたしかたないことです。でも、人は動けるのに逃げなかった。昔から、津波には高い所に逃げろときまっていて、物的資産を失っても人命が失われるのはよほどのこと。まして今回の地震は昼間の午後で、寒いとはいえ極寒ではなかったのです。
津波に逃げられなかったのは、広報が危険地区としていなかった、とか防潮堤があるから大丈夫と思ったという声が聞こえます。もっとも残念なのは、世界一と言われた防潮堤があるために、迫りくる津波が見えなかった、そして津波はそれを軽々と超えて来たという事実です。何が間違っていたのでしょう。情報社会では、情報が多いばかりでなく、ガセ情報が多いのも特徴です。もちろん、公式情報が少な過ぎてもデマが飛んだりしますから、多い中から正確なものを選ぶことが大切です。今回の地震で、ある漁師さんは、揺れが尋常でないことから家族を裏山へ避難させ、自分は港に行き船を沖に出し、タッチの差で無事だったとか。このような例はたくさんあったことでしょう。反対に、津波がここまでくることはない、と判断した人も多かったのです。
私は、この世界規模の金融危機にも同じことを感じます。1企業のデフォルトや1小国の財政問題が、このように世界を駆け巡り実体経済にも大きな影響を与えるとは、これまで経験しなかったことです。金融といえば、1円でも間違いのない世界と思っていたのに底が抜けていたのです。人がつくったものなのに、安全装置が作動するようになっていなかったのです。どういう仕組みかという情報が、共有されていなかったのです。
私たちはどうすればいいか。正確な情報を得るために、もっと利口にならなければならないでしょう。勉強するといっても、間違った勉強はしないほうがいい。何事も自分の目で見ること。情報遮断の訓練も必要かもしれません。

バナースペース

佐野陽子ゼミナール同窓会